Climategate、IPCC-Gate後の世界

−− 気候変動に関する国際会議 −−

今年の5月、シカゴで『第4回気候変動に関する国際会議(ICCC)』が開かれました[1]。国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)と名前こそ似ていますが、ICCCは人為的CO2温暖化説に否定的な研究者(懐疑派)が中心となっている国際会議で、アルファベット一文字違いながら中身は随分と異なります。
ICCCは700名を超える出席者で盛況だったようですが、日本のメディアは取り上げないでしょうから、気候変動の原因と温暖化詐欺のトピックに焦点を絞って紹介します。ICCCの講演はオンラインで録画を見ることができますし[2]、論文として発表されている物も多く、一般向けに分かり易く解説したBlogも幾つかあるようです(ほとんどが英語ですが)。

まず最初に現在の地球の気候変動の状況を確認しておきますと、地球の平均気温は'98年を境に寒冷化傾向を示していることが複数の観測で報告されています(Fig.1)。今年に入ってからはエルニーニョ(南方振動)の影響で気温が上がっているものの一時的な現象であり、今月はエルニーニョが収まる兆しも出ていますし、今後も寒冷化が続く可能性が高いと言われています。


Fig.1: 世界気温の観測結果(ピンク:Hadey CRUT 青:MSU)とCO2濃度(左図)。観測された気温と、IPCCによる予想(右図)。

Climategate事件[3]で炎上したイーストアングリア大学・気象ユニット(CRU)のPhil Jones所長自身が、

「過去15年間で有意な地球温暖化は起きていない」

と認めていますが[4]、21世紀に入って地球が温暖化していないことはCO2温暖化説を支持する研究者(脅威派)に大きな衝撃を与えており、この事実だけでCO2温暖化説は揺らいでしまいます。脅威派の大御所たちですら、

「大気中の水蒸気濃度の減少がCO2による温暖化を相殺している[5]」

となんとも苦しい言い訳を始めたり、

「ガンガンCO2を排出しているはずなのに、CO2濃度はあまり上がっていない[6]」

と、大気中CO2濃度が気候変動の結果であって原因でないこと[7]を暗に認めるような論文も出てきました。

それはともかく国際会議に話を戻すと、ICCCでは現在の寒冷化がいつまで続くか解明することが重要なテーマの一つとなっており、ウェスタンワシントン大学のDon J. Easterbrook教授は、地球では過去500年に亘って25〜30年で温暖化と寒冷化が交互に繰り返されてきたことを説明し、地球の気候変動は“Pacific Decadal Oscillation(PDO)”で説明できるのではないかと発表しました。PDOは“太平洋十年規模振動”と訳されますが、約20年周期で起こる太平洋各地の海面水温や気圧の変動で、そのメカニズムはあまりよく分かっていません。Easterbrook教授によると、地球の温暖化・寒冷化の時期とPDO指数を調べるとFig.2のように大変良く一致しており、PDOが'99年に低温モードに入ったことから20〜30年は寒冷化が続くのではないかとのこと。


Fig.2: PDO (太平洋十年規模振動)と、過去の温暖化・寒冷化の時期。

海洋の熱容量は大気の1,000倍ですから、太平洋の海面水温の低下(上昇)が地球全体の平均気温を下げる(上げる)という説明は自然だと思います。Easterbrook教授はPDOと太陽活動との間に強い相関があることを指摘した上で、

「太陽活動、PDO、地球の温暖化・寒冷化にはそれぞれ相関がある」

と結論付けていました。
それに対してメキシコ国立大学のVictor Manuel Velasco Herrera博士は、現在、太陽活動は著しく低下しており、2030〜40年頃に太陽活動は最小になるとの予測に基づき、現在の寒冷化が今後60〜80年続くと主張、21世紀が小氷期となる可能性について言及しました。
ロシアの プルコヴォ天文台のHabibullo Abdussamatov所長も、過去7,500年の間に起きた18回の小氷期は日射強度の低下とそのフィードバック(氷面積の増加による反射能の増加、水蒸気濃度の低下による寒冷化)でほぼ説明できると提唱し、現在のサイクルから計算すると地球は2014年頃に小氷期入りするのではないかとの見解。
また、ハリケーンが専門のWilliam M. Gray教授(コロラド州立大学)は、過去140年の温暖期が熱塩循環(深層の海洋循環)の変化と一致していることに注目し、地球の気候変動の主因は熱塩循環であるとの説。海洋が気候変動の主因と考えるのはEasterbrook教授と似ていますが、Gray教授も現在の寒冷化は数十年続くと見ているようでした。

私見ですが、太陽活動が地球の気候変動に一番影響していることは、地球温暖化と時期を同じくして火星など他の惑星も温暖化していたことから疑いないと思います[8]。ただそのメカニズムについては様々な議論があり、例えばPDO、熱塩循環、フィードバックの他にもスベンマルク効果(太陽活動低下による宇宙線量の増大、そして宇宙線による雲生成の増加)なども提案されており、仮にEasterbrook教授が主張するようにPDOと地球の気候サイクルとの間に強い相関があったとしても、必ずしもPDOと気候変動との間の因果関係を意味するわけではないことに留意する必要があります。初めから他の可能性を排除してしまっては、CO2温暖化説と同じ間違いを犯してしまいますから。
現在の地球が温暖化していないことには多くの科学者が同意していますが、今後、どうなるかについては意見が分かれています。温暖化より寒冷化の方が人類に与える被害は甚大なので重要な問題ですが、1998年のエルニーニョによる一時的な気温上昇を除くとここ数年の寒冷化は0.4℃/100年と緩やかなものであり、個人的には小氷期を心配する程でもないと考えています。ただ、現在の太陽活動は11年周期のリズムが崩れており、太陽黒点数も著しく減少するなど、マウンダー極小期(1645〜1715年の小氷期)との類似性も指摘されています[9]。

さて温暖化詐欺に話を移すと、アメリカの気象予報士で有名なブロガーAnthony Watts氏は、彼が突き止めた温暖化詐欺の手法を報告。以前の私の日記でも紹介しましたが、市民が協力して調査を行ったところ、アメリカの気温観測ステーションの90%がいつの間にかアスファルトの駐車場やエアコンの排熱口の近くなど暑い場所に置かれており、通常より1〜5℃も高めの気温を叩き出していました。加えてアメリカ海洋大気圏局(NOAA)はデータ均質化やスムージングなどの“補正”を行い、ヒートアイランド現象を誇張することで地球温暖化を演出しているとWatts氏は発表。
続いてアメリカ大気河川改善研究所のCraig Loehle博士は、NOAAの気温データからヒートアイランドの効果を取り除くと『59年周期の温暖化・寒冷化変動』が現れ、Easterbrook教授の指摘したPDOで地球の気候変動を説明できると発表。CO2温暖化説に拘らなければ、地球の気候変動を単純かつ自然に説明できてしまうわけです。
そしてカナダの気象学者のJoseph D'Aleoは、NOAAとアメリカ航空宇宙局(NASA)のデータ不正について報告。NOAAは温暖化を示す観測ステーションだけを選別しているようで、NOAAのデータベース(GHCN)に登録されているステーション数は、1980年と比べて2007年には1/3以下にまで不自然に減少しています[10]。ステーション数が減少したのはNOAAによると、

「データ取得に時間がかかるものもある」

だそうですが[11]、20年前のデータが未だに更新されていないのは、あまりに時間がかかり過ぎでしょう。


Fig.3: GHCNが気温算出に利用している観測ステーション数(黒)と、アメリカの平均気温(ピンク)。1980年以降の急激なステーション数の減少と反比例して、アメリカの平均気温が急上昇している。

Anthony Watts氏も説明していましたが、NOAAは謎の“補正”を施すことで寒冷化しているステーションのデータをあたかも温暖化しているかのように書き直す“マジック”に成功しています。一方NASAは世界の気候変動を算出する際にNOAAのデータを利用していますが、より暖かい場所に設置されたステーションのデータを寒い地域のものとして補ったり、NOAAに負けじと更なる地球温暖化への挑戦を日夜続けています。
世界気温の4つの観測データベースはCRU、GHCN(NOAA)、GISS(NASA)、気象庁ですが、CRUもGISSもNOAAのGHCNのデータを元に構築されており、残る気象庁も2000年以前はGHCNを利用していたため、GHCNのデータが腐っていた以上、結局どれも信用できないことになります。データ捏造に対して脅威派の研究者がよく使う、

「4つの独立した観測結果が全て同じ温暖化傾向を示している」

との反論は脆くも崩れ去るわけですが、現在、信頼できる過去の気温データベースがないことは大変な問題だと思います。世界に与えた影響は莫大で、捏造に関与した科学者の罪は、あまりに重い。
また、バージニア大学を引退したFred Singer翁は、衛星観測の結果と照らし合わせ、NOAAが不自然な観測ステーション選別をせず、かつ怪しげな補正も行わなければ、1979〜'97年で温暖化はほとんど起きていないんじゃないか、ということを言っていました。

懐疑派のトークばかり取り上げましたが、ICCCには脅威派の研究者も招待されており、コロラド州立大学のScott Denning教授もスピーチを行いました[12]。懐疑派の国際会議で、脅威派の研究者が温かい拍手で迎えられ、和やかに議論が進行する。当たり前のことのようですが、もし逆の立場で懐疑派の研究者が脅威派の会合に出かけたら、無視されれば良い方でしょう。科学とは無関係の誹謗中傷を浴びせられることも珍しくないです。

『地球の気候変動は自然現象で、人間の手でコントロールすることは出来ない』

当初は多くの研究者がそう考えていたのにも拘わらず、CO2温暖化説は政治やメディアを利用して多額の予算獲得に成功し、学会をコントロールするに至っています。自然現象ならほとんど予算が付かないですが、“人為的”温暖化なら多くの人々が注目しますから。学会、政界、国連、金融、そして産業界の思惑が複雑に絡み合い、地球温暖化は科学的に間違っていても、もはや間違いだと認められない状況になってしまいました。雑音から隔離し、今回のICCCのようにオープンな科学の場で冷静な議論がもっとなされるべきではないでしょうか。


−− あまりにいい加減だった科学 −−

最近、ペンシルバニア大学法学部のJason S. Johnston教授が国連IPCC報告書を検証した第三者レポートが公開され話題になっています[13]。

『IPCCではCO2温暖化説に不都合な研究は否定もしくは無視され、合意が捏造された。ほぼ全ての主張が非科学的、若しくはいい加減に行われていた。』

という内容ですが、Johnston教授はIPCC報告書の数多くの問題点を個別に検証しており、法律の専門家が第三者検証を行った点で意味があると思います。IPCC報告書は“科学的コンセンサス”どころか、WWFやグリーンピースなど環境活動団体の広告、登山雑誌の記事、更には学生のレポートまで引用していたりと何でもありでしたが、客観的かつ厳密であるべき科学がこと地球温暖化に関してあまりに杜撰に行われていたことは、一科学者としてショックであり大変残念です。
私も仕事で大型プロジェクトの予算申請書や報告書をよく書いていますが、分厚いレポートの中に僅かなミスが見つかっただけでプロジェクト全体の信用が失われるため、いつも細心の注意を払い、同僚たちに何度も検証してもらっています。IPCC報告書では地球温暖化説の根底を揺るがす致命的な間違いが次々と発覚しているのに、脅威派は、

「3,000ページの文書に多少のミスは当たり前」

と強弁しており、正直、その神経が理解できません。

日本では“IPCC-Gate”についてあまり報道されていないようなので、杜撰な温暖化研究の一例として、NASAの人口衛星を使った南極観測と、温暖化業界の近況について紹介します。

NASAは温暖化研究で多額の予算を得ている研究機関の代表格ですが、2007年に、

『衛星観測によると、南極の温暖化が進行している』

と発表[14]、それを支持する観測結果として昨年、

『衛星観測で南極東部で数10億トンの氷が毎年失われていることが分かった』

と報告しています[15]。共にCO2温暖化説を強力に裏付ける観測結果として多くのメディアでも報道されましたが、これらの研究を調べてみると、あまりに短絡的な発表だったことが分かります。


Fig.4: 2007年NASA発表の南極地表の気温変動(左)。アラバマ大学が解析した南極の気温変動(左)。共に衛星観測。

Fig.4左図がNASAが'07年に発表した南極地表の温暖化を図示したものですが、年間0.05℃程のペースで南極大陸が急速に温暖化している様子が描かれています。この図だけ見ると南極大陸の温暖化は疑いないように思えますが、実はNASAが行った人工衛星からの温度観測は精度が低く、NASA自身も認めるように測定誤差が2〜3℃もあることが知られています。右図はアラバマ大学のチームが解析したNASAの人工衛星による南極の気温変化、誤差が大きいため何とも言えませんが、温暖化どころか僅かながら寒冷化しているようにも見えます。また南極観測隊による記録では、南極大陸は1960年以降に寒冷化していると報告されており[16]、結局のところ、NASAは誤差の大きい人工衛星の観測結果に都合の良い解析を加えて南極大陸の温暖化を“演出”したのでしょう。事実、NASAが2004年に発表していたグラフ(Fig.5)では南極大陸は寒冷化しており、莫大な研究費が南極大陸の気温まで変えてしまったのかもしれません。


Fig.5: 2004年NASA発表の南極の気温変動。衛星観測[17]。

NASAはどのような解析を行ったのか公開し、'04年と'07年で正反対の解析結果を発表した経緯を明らかにするべきですが、いずれにせよ測定精度3℃の温度計で0.05℃の年変化を断定するというのは、まともな科学者の仕事とは言えません。私の同僚は、James Hansen所長のデータ操作疑惑が持ち上がった際に[18]、

「人類を月に送った研究機関が、地表の温度もまともに測れないのか」

と呆れていましたが、もっともな感想。

『消失した南極東部の数10億トンの氷』についても、衛星観測の精度に疑問符が付きます。NASAは人工衛星GRACEを使った重力測定で南極の氷量を推定したのですが、微弱な重力変化を衛星から検出するのは技術的に難しく、GRACE観測の精度について研究者の間で疑問が噴出しており[19]、“あくまで補助的な観測手段”と見做されています。マスメディアはNASAの発表を鵜呑みにして、

「地球温暖化で、南極東部の氷が大量に溶け出している」

とヒステリックに報道していましたが、夏でもマイナス30℃の南極東部で氷が溶けるというのは、物理の常識を覆す大発見かもしれません。

次から次へと疑惑の出てくる温暖化業界ですが、二週間ほど前にも、

『(地球温暖化の主因はCO2であり)太陽活動の影響はほとんどないとの科学的な合意が得られている』

というIPCC報告書の記述に関して、IPCCで太陽活動を専門としていた科学者はJudith Lean博士一人だけであり、即ち“一人の合意”に過ぎなかったという疑惑が出ていました。酷いことにLean博士は太陽活動の影響を小さく見せるためデータ操作した上でグラフを引用しており、太陽観測を行ったDoug Hoyt博士やRichard C. Wilson博士ら宇宙物理屋が激しく抗議する事態に発展し、“Judith-Gate”と呼ばれています[20]。

一方、政界に目を移すと、ワシントンではオバマ政権と民主党が地球温暖化を既成事実化すべく、“Cap & Trade法案”の導入に血眼を上げています。

「現在のペースでCO2排出を続けると、アメリカ北東部はかなり温暖化する。今世紀末にボストンの夏の気温は14°F(7.8℃)上がりそうで、100°F(37.8℃)を越す暑い日がニューイングランド地方では年間20日、ハートフォードでは30日を超えるだろう。」

と盛んに宣伝されていますが[21]、アメリカ北東部の気温変化を表したFig.6を見る限り、過去100年間で人為排出CO2による有意な温暖化は観測されておらず、今世紀末にボストンの夏の気温が8℃近くも上昇すると言った根拠は全く以って不明です。


Fig.6: アメリカ北東部の夏の平均気温の推移(青線)、黒い棒グラフは人類のCO2排出量。

NASAの南極の話やJudith-Gateやボストンの謎の温暖化は氷山の一角に過ぎず、学界でもマスメディアでも『地球温暖化であれば何を言っても許される』という空気が蔓延していたため、気候変動の研究では他分野では考えられないあまりにいい加減な話が権威付けられ、まかり通っていました。IPCC報告書はウソと誇張のオンパレードだったわけで、第4次報告書の統括執筆責任者だったMurari Lal教授は、誇張や捏造が行われたのは、

「政治家たちに衝撃を与え、実際に行動を起こさせるためだった」

と弁明していますが[22]、とても科学者の発言とは思えません。プリンストン大学の物理屋のWilliam Happer教授によると、

「IPCCとは科学の仮面を被ったロビー団体」

だそうで、Happer教授はエネルギー省で合衆国のエネルギー政策を統轄していた頃の感想として、

「ブリーフィングにやって来る科学者に質問すると、普通は喜んで答えてくれる。ところが気候変動を研究している科学者は違った、彼らは宗教カルトのようだった。」

と述べていますが[23]、脅威派グループの反論を許さない異様な雰囲気は、私も肌で感じていました。
特に京都会議以降、“地球温暖化”と名の付くプロジェクトに莫大な予算がばら撒かれ、脅威派の圧力でCO2温暖化説に懐疑的な論文や予算申請が悉く却下されるようになった結果、少なからぬ懐疑派の研究者が表舞台から駆逐されました。温暖化を証明するために予算が付いた研究で、温暖化を否定する発表は出来ないですから、世の中は地球温暖化を裏付ける(ように見える)情報で溢れてしまいました。
欧米では昨年11月のClimategate事件を発端にIPCCや温暖化のウソが連日のようにニュースで報道されたため、状況は一転しています。日本のマスメディアも、地球温暖化の科学が現在進行形で崩壊していることを、ちゃんと報道すべきではないでしょうか。


−− 脅威派の逆襲 −−

今年に入り、IPCCのリードオーサー(代表執筆者)の中からも公然とIPCC批判を行う研究者が続出し、CO2温暖化説を否定する論文も学術誌に掲載されるようになりました。学会は少しずつですが、健全さを取り戻しつつあります。
アメリカでは脅威派研究者の論点を摩り替えての反論や、懐疑派研究者への政治力を使った個人攻撃が目立つようになりましたが、日本の状況と似ています。先月は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された『気候変動における研究者の信頼性』という論文[24]が議論を巻き起こしていました。意訳すると、

『懐疑派の研究者はろくに研究もせず、市民を惑わしている』

という内容で、懐疑派を“denier(ホロコースト否定のナチス支持者を暗に指す言葉)”と呼んでいますが、科学的にナンセンスな批判だらけの文章を権威あるPNASが掲載したことに分野外の研究者たちも呆れ果てています。科学者なら科学の舞台で勝負すべきで、他の研究者への陰湿な誹謗中傷ではなく、真実の追究に努めるべきでしょう。PNASに掲載された論文の著者の一人James W. Prall氏はトロント大学のシステムプログラマーだそうで、彼は“懐疑派ブラックリスト[25]”なる物を編纂しています。CO2温暖化説に否定的な論文を発表したり嘆願書に署名した研究者の氏名、所属、国籍、ホームページなどを丹念に調べ上げ、ご丁寧にもランク付けした上でトロント大学のサーバーで公開。“ブラックリストに乗ると研究費が取れなくなる”とも噂されていますが、懐疑派の研究者を晒し上げ名声を傷つけることを目的としてリストが配布されているのは間違いなさそうです。尤も、私の同僚は、

「政治的圧力に屈せず、真実を貫き通した誇り高き科学者たちのリストだ」

と言っていますが。

不祥事が相次ぎ地球温暖化は科学として破綻する一方、学会や政界はまだまだ脅威派が牛耳っており、懐疑論を政治的に潰そうと躍起になっているのはまるで宗教戦争のようです。国連事務総長が『温暖化懐疑派の声拒絶』を訴えたり[26]、Climategate事件で炎上したCRUの調査を行ったイギリス議会は僅か一日のヒアリングだけで、

「(CRUの科学者らのデータ不正を示す)証拠は見つからなかった」

と潔白を謳い上げていますが[27]、証拠が見つからなかったのか、見つける気がなかったのか不明。同じくCRUの詳細な調査を行ったはずのRussell卿も、

「情報公開の拒否など問題はあったものの、CRUの科学者の不正は見つからなかった」

と結論付けただけで[28]、CRUから流出したメール(内部告発とも言われています)で明らかになった、以下の疑惑について突っ込んだ追及はなされていません。

 ・CRUの科学者らは、気温の生データや解析手法の公開を頑なに拒否していた。
 ・情報公開法の抜け道を模索し、データの不正操作の相談を行っていた。
 ・情報公開請求を受けたらデータを消去すると言っており、実際に消去してしまった。
 ・懐疑派への攻撃や圧力が行われていた。
 ・60年代以降の気温低下を隠すトリックについてメールでやり取りがあった。
 ・気温低下を隠すデータ操作を行うプログラムが見つかった。

現実問題としてCRUのPhil Jones所長は関係者に証拠隠滅の依頼をしたのであり[29]、世界中で使われているCRUの世界気温のデータベースの元となった過去160年間に亘る気温観測データも消去されてしまいました。アリバイのように怪しげな補正の加えられたデータベースだけは公表されたものの、

「データの補正方法を記したメモは紛失した」

とPhil Jones所長が言っている以上、その信頼性はネス湖のネッシーといい勝負かもしれません。
IPCC報告書の検証を行ったオランダ環境アセスメント局も、IPCCの多数の過ちを認めたものの、

「地球温暖化は進行しており、IPCC報告書の結論は揺らがない」

と言っていますが、現実には地球温暖化は止まっており、“禊払い”を真に受ける人も少ないでしょう。学会の権威や国家権力を使い、

「地球温暖化の研究者は正直者だから信用せよ」

と言えば言うほど、温暖化研究が市民の支持を失っているのは、何とも皮肉です。Climategate事件でアメリカ市民の多くがCO2温暖化説に呆れており、IPCC-Gate発覚前の今年1月の時点ですら、

「地球温暖化は自然変動、若しくは地球は温暖化していない」

と答えた市民が45%に上っていました[30]。その後の一連のIPCCの不正発覚で、現在では市民は地球温暖化に対して完全に無関心になっています。昨日、NYが暑いというニュースが流れていましたが[31]、“ヒートアイランド現象で気温が上がった”と正しく伝えており、地球温暖化のことは一言も出て来ず、時代の変化を感じました。
CO2温暖化説崩壊への予防線か、最近、アメリカ環境保護庁はオバマ政権の支持を得て、

「CO2は有毒ガスだから規制する」

と言い出しましたが[32]、濃度が100倍になると頭痛を引き起こすものの、一般的な理解では“CO2は毒性の非常に弱いガス”。
国連もIPCCを利用したグローバルガバナンスに見切りをつけたのか、『生物多様性と生態系に関する政府間プラットフォーム(IPBES)』なる怪しげな組織を立ち上げ[33]、次の資金源として注力しているようです。
地球温暖化やCO2になると、どうしてこうもウソや出鱈目がまかり通ってしまうのか理解に苦しみますが、もはや科学ではなく政治ですから、温暖化論争の帰着は世論が決めることになるでしょう。欧米の市民の間ではCO2温暖化説は急速に支持を失っていますが、日本ではマスメディアがClimategateやIPCC-Gateの実態をほとんど報道していない上に、脅威派の研究者が事件の矮小化を図ったこともあり、地球温暖化への国民の支持は相変わらず高いまま。日本は毎年1兆2千億円もの温暖化対策に加えて、発展途上国への温暖化対策支援として2012年までに1兆7,500億円を約束。京都議定書を遵守するには同年までに9,400億円の排出枠購入が必要ですし[34]、前総理の“25%公約”に至っては、

『仮に国内で13%削減できたとしても、1兆7千億円の排出枠購入が必要』

とドイツ銀行が試算していましたが、感謝すらされない経済援助を日本は本気で続けるのでしょうか。地球温暖化で巨額の税金が無駄にされる一方、重要な基礎研究が仕分けされた話を聞くと、一科学者として何とも虚しい気分にさせられます。
日本は大丈夫なんだろうか。地球の裏側からですが、心配しながら見ております。


References

[1] http://www.heartland.org/events/2010Chicago/
[2] http://www.heartland.org/environmentandclimate-news.org/ClimateConference4
[3] S. Mosher and T.W. Fuller, 『地球温暖化スキャンダル(渡辺正訳)』, 日本評論社 (2010).
[4] http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8511670.stm
[5] S. Solomon et al., Science 327 (2010) 1219.
[6] M.R. Manning et al., Nature Geoscience 3 (2010) 376.
[7] 槌田敦, 日本物理学会誌 62 (2007) 115.
[8] L.K. Fenton, P.E. Geissler and R.M. Haberle Nature 446 (2007) 646.
[9] 宮原ひろこ, ICRRニュース 72 (2010) 7.
[10] http://scienceandpublicpolicy.org/images/stories/papers/originals/surface_temp.pdf
[11] http://www.ncdc.noaa.gov/oa/climate/research/Peterson-Vose-1997.pdf
[12] http://www.youtube.com/watch?v=kkL6TDIaCVw
[13] http://ssrn.com/abstract=1612851
[14] http://earthobservatory.nasa.gov/IOTD/view.php?id=8239
[15] http://earthobservatory.nasa.gov/Newsroom/view.php?id=42399
[16] P.T. Doran et al., Nature 415 (2002) 517.
[17] http://earthobservatory.nasa.gov/IOTD/view.php?id=6502
[18] http://www.telegraph.co.uk/comment/columnists/christopherbooker/3563532/The-world-has-never-seen-such-freezing-heat.html
[19] K.J. Quinn and R.M. Ponte, Geophysical Journal International 181 (2010) 762.
[20] http://climaterealists.com/?id=5910
[21] http://globalwarming.house.gov/impactzones/newengland
[22] http://www.dailymail.co.uk/news/article-1245636
[23] http://www.dailyprincetonian.com/2009/01/12/22506
[24] http://www.pnas.org/content/early/2010/06/04/1003187107.abstract
[25] http://www.eecg.utoronto.ca/~prall/climate/skeptic_authors_table.html
[26] http://www.guardian.co.uk/environment/2010/feb/24/ban-ki-moon-un-reject-sceptics
[27] http://www.foxnews.com/scitech/2010/03/31/climate-gate-inquiry-largely-clears-scientists/
[28] http://www.cce-review.org/pdf/FINAL%20REPORT.pdf
[29] http://eastangliaemails.com/emails.php?eid=893
[30] http://environment.yale.edu/climate/files/Climategate_Opinion_and_Loss_of_Trust_1.pdf
[31] http://hosted.ap.org/dynamic/stories/U/US_HOT_WEATHER_HEAT_ISLANDS?SITE=WSPATV&SECTION=NATIONAL&TEMPLATE=DEFAULT
[32] http://www.epa.gov/climatechange/endangerment.html
[33] http://ipbes.net/
[34] http://president.jp.reuters.com/article/2010/01/09/DF1CF1CA-FC15-11DE-9764-ADF03E99CD51.php